「父ノ背中」きんちインタビュー 勝つだけでなく、驚きを与えたい
日本最大級のリーチを誇るプロゲーミングストリーマー集団「父ノ背中」の中でもひときわゲームを愛し、こだわりを持ってプレイするきんちさん。プロゲーマーとして、ストリーマーとして、あらゆる面で多くのファンを持つ人物だ。今回のインタビューでは、プロゲーマーになった経緯、そして動画に対する哲学を伺った。
「父ノ背中」の中でもひときわゲーム愛の強いきんちさん。
―― まずはきんちさんのプレイヤーネームの由来について教えてもらえますか。
きんち:最初は「クロスエッジラプソディ」という名前で活動していて、さすがに中二臭いということで改名することにしたんです。それで「クロスエッジチキン」にしたところ、てるさんから「YouTubeで活動するには長すぎる」と言われてしまって。それで「チキン」だけでYouTubeに登録することになって、苗字に「ち」、名前に「きん」にしたら、そうしたら登録上ひっくり返って、今のきんちになったんです。すごい間抜けな話なんですけど、結果的には検索されやすいし、皆さんにも覚えてもらえるので良かったのかなと思っています。
―― 子供のころや学生時代は、どんなゲームを遊んで育ちましたか?
きんち:小学校3年のときからずっと『ファイナルファンタジーXI』を遊んでました。両親が元々プレイヤーで、その2人を手伝う形で入ったんですけど、それが意外と楽しかったんですよね。MMORPGって、オフラインのゲームではありえない強さの敵も出てくるじゃないですか。それがMMORPGだと複数人で挑んでもなかなか倒せなかったり。そういった難易度の高さが逆に楽しくて、バフの張り替えとか、レジストのタイミングとか、オフゲーでは味わえない緊張感ですよね。
―― FPSとの出会いはいつごろでしたか?
きんち:中学のときくらいだったと思います。当時は『コールオブデューティー4』や『バトルフィールド バッドカンパニー2』を父と2人で遊んでました。そのときはガッツリプレイする感じではなく、相変わらず『ファイナルファンタジーXI』中心の生活でした。それが変わったのが高校卒業したあたり、『ファイナルファンタジーXIV』が登場して僕もプレイしたんですけど、当時はコンテンツの空き時間がかなりあったんです。その空き時間で『コールオブデューティー』の実況者の動画を見て、「めちゃくちゃ上手い!」って(笑)。その動きを真似したいと思ったのが、FPSを本格的に始めるきっかけでした。
―― そこからFPSにハマり、『レインボーシックスシージ』にも出会うことになったと。
きんち:『コールオブデューティー ブラックオプス3』をプレイしていたんですけど、これがめちゃくちゃなジャンプをしたり、ちょっと自分が求めているシステムとは違ったんです。他になにか良いゲームはないかと探しているとき、フレンドがプレイしていたのが『シージ』だったんです。
実況者の動画をきっかけにFPSの世界にのめり込んでいく…。
―― 初めて『シージ』に触ったときの印象はいかがでしたか?
きんち:人によっては難しいという人もいますけど、それって多くのことを一度にやろうとしているからだと思うんです。僕は単純に撃ち合いができればそれでいいくらいの感覚で入ったので、純粋に楽しかったですね。慎重にプレイする人だとどこから敵が来るのか分からなくなってしまうところを、僕はシンプルに突っ込むという(笑)。
―― では、現在の得意な戦略などはありますか?
きんち:恐らくここが敵の要だろう、という地点を見つけて、その一点を潰しに行く戦い方が多いです。敵の懐に入って内側から崩壊させることは常に考えています。相手の守り方や攻め方を見ていると、要となる地点もだいたい分かるようになるんです。経験を活かしつつ探っている感じですね。
―― プロゲーマーになろうと思ったきっかけについても教えてもらえますか。
きんち:なろうと思ったというより、なっちゃったと言ったほうが正しいです。最初はてるさんに声をかけてもらって、楽しく『シージ』を遊んでいただけだったんですけど、いつの間にかプロになっていました(笑)。
―― 父ノ背中に入ったのも、その流れがあったからこそだったんですね。
きんち:そうなりますね。当時はまだ父ノ背中の前身のHOMEでしたけど、すでに有名でしたし、あまり迷うことなく入ることに決めました。僕からすれば「あのHOMEだ!」という感じでしたからね。
―― メンバーの中で一目置いている人というと?
きんち:『シージ』だとみんな長所が分かれていて、誰か1人を挙げるのは難しいですね。でも僕は積極的に攻めるタイプで、自分の後ろを守ってほしいという意味だと、Apple君が一番信頼できます。Apple君はアタッカーとサポート、両方のスキルがあって、その使い分けというか、メリハリが効いているんです。自分が無理な動きをしてもしっかり合わせてくれて助かります(笑)。
―― 一日の中で、どのような時間に練習をしていますか?
きんち:きんち:練習は夜の9時からと決まっています。寝付きが悪いときはそのままの流れで、朝までプレイし続けることもありますね。あとは昼間に動画をいじる時間があって、それが早めに終わったら1人でランクマッチをやることもあります。
―― 練習の際は、その都度目標を決めるのですか?
きんち:まずはざっくりとした目標を決めます。ただ、ザックリと言ってもかなり高い目標なので、達成できないことも多いです。ある程度プレイしたら動画撮影に入って、そこからは目標とかは考えず、気持ちを切り替えて楽しむようにしています。
―― 長時間ゲームをプレイしていると思いますが、健康に気を使っていることは?
きんち:けんきから完全食のCOMPをもらっていて、最近はよく食べています。事前に匂いにクセがあると聞いていたんですけど、僕はそれほど気にならなくて、味も美味しいので積極的に食べています。あとはたまに散歩するくらいですかね。昼間ではなく夜の散歩なんで、あまり太陽の光は浴びてないんですけど(笑)。
―― ゲーム以外の趣味や特技というとなにかありますか?
きんち:以前は川や海に釣りへ行くことが多かったです。東京に引っ越してくる前は茨城に住んでいたので、霞ヶ浦とか大洗によく行ってましたね。それと車を運転するのも好きで、これまでは軽のワゴンに乗っていたんですけど、ゆくゆくはスイフトスポーツとかにも乗ってみたいですね。
ストリーマーとしては、ユーザーに驚きを与えられる展開を意識している。
―― ストリーマーとしての一面もあると思いますが、動画を見せる際のこだわりを教えてください。
きんち:他の人達と違うところというと意外性というか、「それ勝っちゃうんだ」「それ逆転できるんだ」みたいな、勝つだけでなく驚きを与えられるような場面を多めにしています。編集に関しても格好良く見せるのはもちろん、小ネタを仕込むのも好きです。最近だと『Undertale』の要素をちょこちょこ入れたりしていますね。
―― 今後動画で挑戦してみたいことはありますか?
きんち:実写とかもいろいろやってみたいですけど、やるからにはリスナーに驚いてほしいんですよね。ただ、驚かせるほど奇抜な内容がなかなか思いつかなくて…(笑)。リスナーからは「ひたすら『シージ』をやってほしい」と言われることも多いので、こちらもしっかり力を入れないといけないですね。
―― ファンとも積極的に関わるようにしているのですね。
きんち:なるべく壁を作らないようにと意識していて、動画でのコメントも、グレーゾーンでない限りは返信するように心がけています。
―― ファンからは自分自身のことをどのように見られていると感じますか?
きんち:天然キャラじゃないですかね(笑)。ゲームをやり始めると頭の中がゲームでいっぱいになるので、コメントも全然入ってこないんです。1+1と聞かれているのに、頭の中では掛け算をしてしまう感じというか、違う方向に話が行っちゃうんですよ。
―― 他のストリーマーときんちさんとの違いを感じることは?
きんち:今の話につながってきますけど、もうちょっと普通に喋れたほうが良いかなというのは感じますね。他の人みたいに喋りながらゲームができていないので、本当に反省点ばかりです。たから他の人の動画を見るときも、ゲームプレイではなく「今の喋り上手いな」とか、そっちばかり気にしています。
―― プロになる前と後で変化はありましたか?
きんち:元々アウトドア派だったんですけど、外に出なくなりましたね。アルバイトもしなくていいし、今はとにかくゲームに専念できる環境が整っているのは大きな変化だと思います。
―― 最後に、将来の夢についても教えてください。
きんち:まずはプロゲーマーとして年収1000万円プレイヤーになることは大きな目標として掲げています。ストリーマーとしては、現状『シージ』しかリーチがないので、FPSに限らずさまざまなゲームでリスナーを増やせるようにしたいです。
常にゲームを愛し真摯に向き合う姿勢がステキなきんちさん。
自由奔放な動画配信を行っているが、ゲームに対する接し方は常に真摯。そんな一面もファンを増やす要因になっているのだろう。今後はストリーマーとして、どんな成長を見せてくれるかにも注目したい。