「父ノ背中」てるしゃんインタビュー リーダーとして、父のように見守るチームの未来
日本最大級のリーチを誇るプロゲーミングストリーマー集団「父ノ背中」でリーダーを務めるてるしゃんさん。プロゲーマーはもちろん、ストリーマー、そして子供を育てる父親、多彩な表情を持つ人物だ。そんなてるしゃんさんへのインタビューでは、「父ノ背中」に対しても父親のような目線で支える姿を伺い知ることができた。
比較的早いタイミングでPCゲームに触れていった
――まずはプレイヤーネームの由来から教えてもらえますか。
てるしゃん:本名にてるが付いているから最初は「てるさん」と呼ばれていて、それがいつの間にか「てるしゃん」に変わっていったという簡単な理由です。
――これまで、子供のころや学生時代はどんなゲームを遊んで育ってきましたか?
てるしゃん:3歳くらいからファミコンに触っていて、『マリオ』とか『ボンバーマン』とかを遊んでいましたね。その後スーパーファミコンが発売されたんですけど、あのときは『MOTHER』が特に印象に残っています。それ以外にもゲームボーイも買ってもらいましたし、小さなころからゲーム中心の生活でした。
――では、FPSと出会ったのはいつごろですか?
てるしゃん:PS2の『メダルオブオナー』でした。それまでの日本のアクションゲームというと三人称視点が中心で、一人称視点自体が珍しかったじゃないですか。だから凄いと思ったと同時にハマっちゃいましたよね。といっても当時はオンライン対戦もないので、ストーリーモードでずっと敵を撃っていました(笑)。
――その後のFPSの遍歴についても教えてもらえますか。
てるしゃん:『メダルオブオナー』のあとは割と早いタイミングでPCを買って、『カウンターストライクオンライン』や『バトルフィールド』といった有名な作品を一通りプレイしましたね。PCを買ったのも「コンシューマではできないゲームをやりたい」という思いがあったからで、とにかくいろんなゲームに手を出しました。
――そこから『レインボーシックスシージ』に出会うわけですが、そのきっかけは?
てるしゃん:『シージ』が発売されるだいぶ前に『レインボーシックス パトリオット』という作品が発表されていて、僕も期待していたんですけど、これが発売中止になってしまったんですね。残念に思っていたところで『シージ』のことを知って、軽い気持ちでβテストに参加したらとても面白くて。当時僕が活動していたマルチゲーミングチーム「HOME」のメンバーに「一緒にやろうぜ」と誘ったのが始まりでした。
――プロになろうと思ったきっかけについても教えてもらえますか。
てるしゃん:HOME時代の初期メンバーと出会えたことが一番のきっかけですかね。こいつらとだったら高いところに行けると思わせてくれたんです
初期メンバーと出会えたことがプロになろうと思った一番のきっかけ
――父ノ背中はHOMEと、けんきさんを中心とした学校長が手を組んで生まれたんですよね。その当時のてるしゃんさんの気持ちを振り返ってもらえますか。
てるしゃん:最初は本当に軽い考えで、HOMEと学校長の合同チームで当時最強だったチームとクラン戦をしてみたんです。そうしたら驚くほどの楽勝をしてしまって、「これはいける」と思ったのがそもそものきっかけでした。クラン戦のあとにすぐ話し合いをして、すんなり決まったのを覚えています。けんきは賢いやつだし、Appleも『バトルフィールド』ですでに有名、実力があったチームでしたからね。
――『シージ』ではどんな戦い方が好きですか?
てるしゃん:全体を見渡して、味方の欠けている部分を埋める、相手の欠けている部分を攻めるのが好きです。要するにカバーですね。だからマッチによって自分自身の動きも変わりますし、学ぶべきことも多いです。「この戦術知らねぇ!」というケースが大会本番中でもあったりして大変ですけど、その分やりがいも感じます。
――大会など重要な試合で心がけていることは?
てるしゃん:自分を含めてメンバーの心理状態です。全員が常に冷静であることがベストであり、声掛けは意識的に行うようにしています。その人を励ますような言葉はもちろん、相手の動きに対するアドバイスもします。
――ときには味方がミスをすることもあると思いますが、てるしゃんさんはどのように対処しますか?
てるしゃん:失敗した原因を聞いて、どう対処するべきか質問してみます。質問して答えがはっきり返ってくるならもう任せますね。基本的にみんな賢いので、多くを言う必要はないんですよ。メンバーは全員百戦錬磨で、なんなら僕が一番ゲームのプレイ時間が短いくらいなので(笑)。
――日本のチームと海外チームで、勝手の違いは感じますか?
てるしゃん:それぞれのプレイスタイルに特色がありますよね。事前の練習では相手の動きに合わせた戦略を練りますし、メンバー間で注意点の共有も行います。場合によっては他の人の動画を見て研究することもありますね。
――父ノ背中のメンバーで、特に上手い感じる人はいますか?
てるしゃん:お世辞ではなく、僕からすると本当に全員上手いですよ。甲乙つけがたいというか、誰か1人を選ぶのは難しいです。
リーダーとしての立場ならではの自責思考と責任感
――てるしゃんさんは父ノ背中のメンバーであると同時に、リーダーとしての活動もあると思います。特殊な立場での難しさは感じますか?
てるしゃん:メンバーがなにか失敗したり、問題を起こしたら全部自分の責任だと思っています。例えば誰かが仕事に遅刻したら、それは僕が早目の時間を教えておけばよかったわけですし、僕の行動次第でメンバーの失敗を防げると思うんですよ。そこは常に気をつけてますし、リーダーならではの仕事なのかもしれません。
――逆にリーダーでよかったと感じることは?
てるしゃん:みんな良い奴らで、僕のことを慕ってくれてることですかね。もちろん全員精力的に仕事をしてくれるし、そういう意味では僕はほとんど働いてないですよ(笑)。仲が良くて、楽しくゲームができて、このままずっと続いたらいいなと思わせてくれることがリーダーとしてのやりがいですよね。
――現在は北海道に住んでいますが、あちらでの生活はいかがですか。
てるしゃん:北海道に住んでいても、やっていることは普通の人と変わらないですよ。朝は子供たちのお弁当を作って、仕事に行って、帰ってきたら晩御飯の支度をし、子供たちを寝かしつけてからようやくゲームを始める感じです。ゲームは夜中の2時くらいまで続けて、その後また朝6時には起きます。数年に一度は大雪が玄関が開かなくなることもありますけど、涼しいし、家賃が安いし、今の生活には満足しています。
――お子さんとゲームを遊び機会はあるのですか?
てるしゃん:うちの子、ゲームがめちゃくちゃ上手いんですよ。『スプラトゥーン2』は僕が操作を教えてもらうくらいだし、『フォートナイト』だってPC版もSwitch版もプレイしてます。最近は『マリオカート』を一緒に遊ぶこともあって、ボコボコにされてます(笑)。最新作だとアイテムをストックできて、レース中にもいろんな戦略が生まれてくるんです。「奥が深いなぁ」って、驚きながら遊んでますね。
――将来「プロゲーマーになりたい」と言われたら歓迎しますか?
てるしゃん:どうでしょう…歓迎はしないかもしれないですね(笑)。もちろん最終的には本人が決めることですけど、よく話し合うと思います。この世界が厳しいことは、親である自分自身が知っていますから。
――てるしゃんさんはストリーマーとしての一面もありますが、動画を配信する際のこだわりはありますか?
てるしゃん:見る人がゲームを面白そうと感じてくれることですね。PCのゲームやFPS、esportsといったジャンルを知ってもらいたくて僕らは活動していて、画面の向こう側にいる人の表情を思い描きながら配信しています。あとは他のメンバーと一緒に動画を作ることもありますけど、これは意識しているというより、仲が良いから自然とやっているものですかね。
――動画配信で今後挑戦してみたいことは?
てるしゃん:実写動画はどんどんアップしていきたいですよね。ただカメラを回してくれる人がいないとダメなので、なかなか多く作れないのが現状です。それとインディーズとか、FPS以外のゲームも動画で紹介したい思いがあります。自分が面白そうと思ったゲームは、いろんな人に見てもらいたいんですよ。
――ファンとのコミュニケーションで意識していることはありますか?
てるしゃん:TwitterのDMを開放していて、誰でも気軽にメッセージを送れるようにしています。PCに関する質問が多くて、基本的に全部返しています。かなりの数をもらっていて、中には返し忘れているのもあるんですけど、こちらとしてはしつこいなんて思わないので、何回も送ってもらいたいです。
――てるしゃんさんにとって、ファンはどのような存在ですか?
てるしゃん:僕はファンになってくれた皆さんが好きだし、ファンからすれば僕たちの動画を好きでいてくれるわけですから、気の合う友達みたいなものだと思っています。だからなにか分からないことがあればすぐに聞いてほしいし、僕も友達と同じ感覚で接します。
――将来の目標や夢があれば教えてください。
てるしゃん:直近だとメンバー全員が年収1千万を超えるという目標を立てています。現状は…あと半分というところまで来ています(笑)。その上で、オリンピックなど世界に向けた大会が開かれたら、ぜひ出場したいです。それは極端な話、FPSではなくてもいいんです。どんなジャンルでもいいから出場できるように頑張って、将来的にメンバーみんなでゲームを楽しくプレイして、楽しく稼げたら最高ですよね。
リーダーとして偉大な背中を見せ続けてくれている
多くの表情を持つ人だが、やはり「父ノ背中」のことを常によく考えていることが分かるインタビューとなった。自分自身だけでなく、メンバー全員のことを気にかけており、リーダーになるべくしてなったと言えそうだ。